今日は玄関について。
お客様が初めて目にするのはその家の玄関であり、おもてなしの気持ちを表現する場所でもある。玄関は身分を示し古民家の形式により部材の組み合わせが異なる。農家住宅の場合は土間から出入りをするため玄関が設けられていない住まいも多い。
玄関とはそもそもは禅に入る入口を意味し、平安時代の中門廊(ちゅうもんろう)という玄関の前進であったものが武家の台頭とともに発展し、江戸時代に確立された。玄関は身分格差が表現される部分で一部のものしか玄関を持つことは許可されず、明治に入り一般家庭にも造られるようになった。床の間と同じく真行草(しんぎょうそう)の仕様があり格式でいえば角材や柾目をつかったものが格式高いとされる。公式行事や接客に使用される玄関を表玄関と呼び、家族が使用するものを内玄関と区別される。玄関土間は農家住宅では三和土仕上げが多いが、格式のある住まいでは平瓦を45度傾けて敷く四半敷きの敷き瓦(しきがわら)や飛び石などで仕上げられる。玄関土間は踏込みと呼ばれ、上がり框より上を取次または寄付きと呼ばれる。上がり框は農家住宅では上がり端(はな)や小縁(こえん)と呼ぶ場合がある。踏込みには沓脱ぎ石が置かれ、その奥に一枚板の式台をつくり上がり框が設置され、舞良戸などが設けられる。上がり框の代わりに地板(じいた)と呼ばれる一枚板で納める場合もある。
玄関周りの構成としては下記のような組み合わせがある。
靴脱石+式台+上がり框+畳
土間+上がり框+畳
靴脱石+地板+畳
玄関周りに関して下記のような用語も使われる。
車寄せ(くるまよせ)
玄関外部に張り出した2本の柱で妻を正面に向けた唐風屋根の神社の向拝のような部分を車寄せといい、牛車を寄せて乗降できるようにした部分で格式の高い作りである。庇を付けてそれを下ろした部分に玄関を設けるのは庇造りといい数寄屋でよく見られる意匠となる。
沓脱ぎ石(くつぬぎいし)
縁側や式台などの前に置き、履物を脱いでそこに置いたり、踏み台にしたりする石。
沓摺り
建物の出入口のうち、開き戸やドアの下枠の部分にある部材。通常は、木や石などで作られることが多く、床面から少し出っ張る形にする。玄関部分では石材などが用いられる。